光を食べるメタ栄養学 vol.3

「光合成する人体①クロロフィルの働き」

 

植物にとっての「血液」にもたとえられるクロロフィル。植物が光合成によって太陽光からエネルギーを生産できるのは、クロロフィルの働きによるものです。

今回は、クロロフィルを摂取することにより、人体も光合成できるようになる・・・?という新たな発見について考察していきたいと思います。

 

■独立栄養生物と従属栄養生物、そのハイブリッド

クロロフィルが「植物の血液」にたとえられるのはなぜかというと、人間の血液中のヘモグロビンとクロロフィルは分子構造が非常に似ているからです。

左の画像をご覧いただきたいのですが、ヘモグロビンでは構造の中心が鉄(Fe)なのに対し、クロロフィルではマグネシウム(Mg)となっています。この差が赤と緑という色の違いをもたらしています。

 

★画像は https://science2be.wordpress.com/2012/09/03/the-amazing-similarity-between-blood-and-chlorophyll/ さまよりお借りしました★

 

植物と私たち人間の大きな違いは何でしょう。植物は太陽光からエネルギーを生産することができ、エネルギー的に独立していますが、人間を含めた動物は、植物や他の動物などから栄養を摂取する必要があり、エネルギー的に他の生物に従属しています。そのため、植物を「独立栄養生物」、動物を「従属栄養生物」と分類します。独立栄養生物は食物連鎖における「生産者」です。

 

★画像は https://www.differencebtw.com/difference-between-autotroph-and-heterotroph/ さまよりお借りしました★

 

陸上の動物も、海の中の生物も、光からエネルギーを生産する独立栄養生物がいなければ生存できません。緑色の植物や藻類は、地球上の生命の起点です。つまりクロロフィルは、自らの身体のしくみを通すことで太陽光という非物質のエネルギーを物質のエネルギーに変換し、動物が利用できる形にしてくれているのです。

 

通常、独立栄養生物と従属栄養生物の境界線は明確だと考えられていますが、その両者のハイブリッド(光合成従属栄養生物)の存在が明らかになってきました。光合成従属栄養生物は、光をエネルギーとして利用できる一方、植物のように二酸化炭素を唯一の炭素源とするわけではなく、他の生物も食べて生命を維持しているのです。

 

★画像はhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9F%E7%89%A9%E9%80%A3%E9%8E%96 さまよりお借りしました★

 

光合成従属栄養生物の代表的なものとして良く知られているのは緑色・紅色非硫黄細菌やヘリオバクテリア(光合成するわけではないけれど、光を栄養にする細菌)ですが、細菌やバクテリアだけでなく、虫の中にも太陽光と他の動物の両方をエネルギーにしているものがいます。

アブラムシの中には、菌類の遺伝子を借りることによってカルテノイド(赤やオレンジ、黄色の色素)を生産する種類がおり、このアブラムシは太陽光のエネルギーを利用して色素を生産するためのエネルギーを補っています。

 

実は、ハイブリッドは菌類やアブラムシにとどまりません。生理的に人間に非常に近いとされるブタももまた、クロロフィルを代謝することによって得た「代謝産物」を、ミトコンドリアに取り込み、エネルギーにしていることがわかってきています。

2014年にJournal of Cell Science(細胞科学ジャーナル)という科学誌に掲載された論文、"Light-harvesting chlorophyll pigments enable mammalian mitochondria to capture photonic energy and produce ATP." 《哺乳類のミトコンドリアは光を採取するクロロフィル色素によってフォトンエネルギーを捕捉しATPを生産している》は、動物の中にも光合成従属栄養生物が存在するとしているのです。

 

ミトコンドリアとは、動植物や菌類の細胞内に存在する器官で、ATP(アデノシン三リン酸)を生産しています。ATPは生命活動において利用されるエネルギーの貯蔵や利用に関わっており「生体のエネルギー通貨」ともよばれています。

上記の研究によると、クロロフィルがミトコンドリアに取り込まれると、ATPを生産するスピードが高まったり、生産量が増加するのだそうです。つまり、動物の身体にも光をエネルギーとして利用するしくみが備わっているということです。

 

これまで私たちは、食べものからエネルギーを摂取しないと命を保つことはできないと考えられてきましたが、食べものだけでなく光も「食べる」ことができるかもしれません。

ここで上記の論文の要約をご紹介したいと思います。

 

「太陽光は、地球という惑星において最も手に入れやすいエネルギー源であるにもかかわらず、太陽光をアデノシン三リン酸(ATP)という生物エネルギーに変換する能力は、光合成生物の葉緑体(クロロフィルは葉緑体に含まれる)だけが持っていると考えられてきた。しかし、哺乳類のミトコンドリアにクロロフィルの代謝物が混合すると、体内に採取した光からATPを合成できることがわかった。

シノラブディシウ・エレガンス(線虫の一種)にクロロフィル代謝産物を与えて光にさらすと、ATP合成は増加したと同時に、寿命も延びることがわかった。またマウスやラット、ブタといった哺乳類にクロロフィルを豊富に含む餌を与えたところ、体内に蓄積したクロロフィル代謝産物が光をエネルギーに変換する可能性があることがわかった。

この結果から推察するのは、クロロフィルの分子はミトコンドリアにおけるATP合成の複雑なプロセスにおいて、コエンザイムQ還元の触媒として働き、その調節する機能を有しているということだ。つまり、植物の色素であるクロロフィルを利用することによって、動物もまた太陽光から直接エネルギーを生産できるのだ。

 

食事から摂取したクロロフィル代謝産物は、血液循環システムから体内の組織へと入り、ミトコンドリアで濃縮する。クロロフィル代謝産物の混入していない動物の組織と比較すると、クロロフィル代謝産物(光を採取する働きを持つ)とともに培養された哺乳類の単離ミトコンドリアや動物由来の組織は、光に曝すことによって高濃縮のATPを生成する。

ATP濃縮を促進したのと同様の代謝産物は、光に曝したシーエレガンスの寿命の中央値を後ろにずらすこともわかった。これは、食べものに由来する代謝産物を介して摂取した光エネルギーは、動物のエネルギーチア者調節機能において重要な役割を担っているという仮説をサポートする。

本研究におけるデータは、食事から摂取したクロロフィル代謝産物がコエンザイムQ還元の触媒となってミトコンドリアによるATP生産の様子を変化させるという仮説と矛盾しない。老化現象、細胞や生物の既往を理解する上で、大きな意味のある発見である。」

 

APTの生産は、人体の健康に関するすべての側面に欠かすことのできない機能です。栄養の状態、環境から受けるストレス、病気といった要素はATPの生産に影響し、老化のスピードを早めたり、別の病気の要因となったりします。

また、ATPの生産は、酸化ストレスの増加や疲労、加齢などによって減少してしまいます。つまり、ATPの生産をサポートすることはアンチエイジングにも効果的。クロロフィルを積極的に摂取することはATPの生産を増やし、老化をスローダウンさせ、様々な病気を予防してくれることになります。

 

さらに、この研究に関してご紹介しておきたいことがあります。

通常、ミトコンドリアの働きが活性化し、エネルギー生産が増えると、活性酸素が増加し、細胞などに酸化ストレスを与えてしまうのですが、この研究では、クロロフィルは活性酸素を減少させることがわかったというのです。

これは、「クロロフィルの分子はATP生成のプロセスにおいてコエンザイムQ還元の触媒として働く」ことと関係しているのかもしれません。還元型コエンザイムQ10は抗酸化物質ですから、フリーラジカル(活性酸素。電子が足りないため、他の分子から電子を奪い、安定しようとする分子)に電子を渡すことができます。

★画像は https://aojiru-seikatsu.jp/active-oxygen-and-antioxidant/ さまよりお借りしました★

 

フリーラジカルに電子を奪われた安定分子は、自らがフリーラジカルになってしまい、他の安定分子から足りない電子を奪おうとしてしまいます。抗酸化物質は、この連鎖を食い止めてくれます。

 

■日常生活への活用法

 

クロロフィルには、他にも以下のような働きがあります。

 

・抗菌・滅菌

・体重減少

・特定の食べものへの依存を緩和する

・貧血・白血病の緩和

・ニキビ

・酸化還元

・赤身肉を食べた際の腸内における細胞毒性増殖抑制

・発がん性物質の生体利用効率低減

・アフラトキシン(カビ毒)の影響低減

 

日々の食生活にクロロフィルを取り入れるには、緑色の野菜や海藻を毎日食べるようにしたいところです。緑の野菜から繊維質を摂り除き、グリーンの成分だけを取り出したコールドプレスジュースは、クロロフィルを効率良く、大量に摂取する手段です。サプリメントもありますが、できれば全体食、より自然な形のコールドプレスジュースからクロロフィルを摂取したいところです。クロロフィルは酸化によって変質してしまいますから、できれば加熱せずに摂取するか、野菜を茹でたり炒めたりするなら、調理後すぐに食べるのがおすすめです。

 

日光を過度に避けることはかえって不健康だということを今回の講座でおわかりいただけたと思います。散歩や軽いジョギングなど戸外での運動をして、日光を体内にとり入れたいですね。