光を食べるエネルギー栄養学 vol.6

「微生物との共生」

 

私たちの身体にはたくさんの細菌や微生物が棲息しています。重さは体重の1~3%に過ぎませんが、人体を構成する全細胞のうち、なんと9/10が微生物群の細胞です。細胞にはDNAがありますから、DNAの9割が細胞ということになれば、人間とは一体何なのだろう、どこまでが人間なのだとうと考えてしまいます。

地球では何十万種類もの微生物が見つかっていますが、そのうち人間と関係を持つものは1万種類以上います。人間と関係を持つ微生物は「ヒトマイクロバイオーム」と呼ばれています。

人間にとって病を引き起こすの原因にもなることから、悪者扱いされることも多かった細菌や微生物ですが、人体の9割を占める微生物叢、ヒトマイクロバイオームは、明らかに私たちと共生しています。そのことから、人マイクロバイオームを「人間の臓器の1つ」とする新たな考え方もあります。

 

さらに「ホロゲノム進化論」では、腸内細菌や、皮膚に棲む細菌やカビ、寄生虫まで含めた全体を「1つの生物」とみなします。それらすべてのDNAが互いにコミュニケーションしながら、環境の変化に対応し、生物として進化してきたと考えます。ホロゲノム進化論に依拠するならば、人間がこれまで淘汰されず生き残ってこられたのは、微生物叢を含めた全体が環境に適合してきたからであり、微生物たちが助けてくれなかったら、今とは違う結果になっていたかもしれないのです。

 

今回は、そんな微生物たちと人間の関係について考えてみたいと思います。

 

■腸内細菌はビタミン類を合成している

 

細菌類や菌類を含む微生物群は、皮膚の表面や粘膜など、人体のあらゆる部分に分布していますが、特に数が多いのは腸内細菌です。腸の働きとしてよく知られているのは、食事を消化し栄養素へと分解する働きですが、実は腸の役割はそれだけではありません。

まず、食べものを消化する時、消化に必要な酵素のすべてが人体由来ではありません。微生物群の働きによって、炭水化物、タンパク質、脂質の分解酵素を生成し、そのおかげで吸収可能な栄養素に分解することができるのです(セリアック病など、多くの疾患の原因といわれるようになった小麦粉の消化するための消化酵素のうち、9割は微生物が生成したものなのだそう)。

一方、腸内細菌にしてみれば、人間の腸の中は居心地がよく、エサもたくさんあるため働き甲斐のある環境なのでしょう。つまり、人間と細菌や微生物はお互いにとって有益な関係にあり、共生しているのです。

 

2012年に発表された論文 "Bacteria as vitamin suppliers to their host: a gut microbiota perspective"(宿主にビタミンを提供する細菌:腸内細菌叢の視点)の要約をご紹介させてください。

 

「食べもの由来の乳酸菌や、ビフィズス菌をはじめとするヒトの腸内に棲息する共生細菌は、それ自身でビタミン類をつくり出し、宿主に提供している。これまで、人体にはビタミン類を合成する能力がなく、そのため外部から供給しなければならないとされていたが、それは事実ではないのかもしれないのだ。

食べものにはたくさんのビタミン類が含まれているが、食生活によっては不足が起こる場合もある。発酵乳に葉酸やリボフラビンなどビタミンB群が豊富な理由は、乳酸菌やビフィズス菌など共生細菌による生合成(生物による化学物質の合成)の結果かもしれないのだ。

さらに、乳酸菌のあるものはコバラミン(ビタミンB12)を合成していることがわかった。」

 

この論文の研究者は「すべてのエンテロタイプ(3タイプある腸内細菌の型、後述)においてビタミン代謝の経路が特定され、2つのエンテロタイプではビタミンB7、ビタミンB2,ビタミンC、ビタミンB1,葉酸の生産に関わる酵素の生合成に関わる遺伝子が特に豊富であることがわかった」としています。

ちなみに、3つのエンテロタイプとは;

 

1型:バクテロイデス属が優勢

アメリカ人や中国人に多い(動物性蛋白、アミノ酸、飽和脂肪酸摂取など、肉食を中心とした欧米型の食事)

 

2型:プレボテラ属が優勢

東南アジア人、中南米、アフリカ人に多い(炭水化物や糖質が多い、農業国の食事)高食物繊維)

 

3型:ルミノコッカス属が優勢

食生活との関連は不明。肥満の人に多い

 

で、日本人は2型とも3型とも言われているそうです。

★画像は https://unlog.me/topics/17thesis-the-effects-of-fibre さまよりお借りしました★

 

■腸内細菌や寄生虫は思考や感情もコントロールしている

 

オランダのLeiden Institute for Brain and Cognition(脳と認知に関するライデン研究所)は、腸内細菌と状態と認知との関係について調べました。

この調査では被験者をプロバイオティクスのサプリメントを4週間に渡って飲んだグループと、偽薬を飲んだグループに分け、比較しました。

その結果「腸内細菌は、マイナス思考や認知の状態に影響を与えている」と断定したのです。サプリメントを飲んだグループにおいてマイナス思考を持つ頻度が有意に少なかったからです。

 

<プロバイオティクスとプレバイオティクス>

プロバイオティクス:菌そのもの

プレバイオティクス:腸内細菌のエサになるもの

 ★画像は http://www.kenkodojo.com/column/guts/detail2/ さまよりお借りしました★

 

腸と脳の関係について、別の研究が明らかにしたところによると、プロバイオティクスは生化学的なシグナル、つまり神経伝達物質を生成することによって、腸と脳や免疫システムとの間のコミュニケーションを図っているとしています。腸内細菌は身体の他の部分とのやり取りにも一役買ってくれているのです。自らの存続のため、宿主である人間の健康が保たれるよう、免疫力が保たれるように神経伝達物質を生成しているのかもしれません。

 

愛猫家なら、猫から人間に感染することもある「トキソプラズマ」という寄生虫についてご存知かもしれません(私も元ノラの黒猫を溺愛しており、ひんぱんにチューチューしているため、以前から気になっていました。汗)。

トキソプラズマはネズミにも感染し、ネズミに感染したトキソプラズマはズミの行動を変化させ、猫に食べられやすくしてしまいます。無気力になったり、反応が遅くなったり、危険を恐れなくなるそうですが、人間に感染した場合は、人間にも同様の行動の変化が現れるのだそうです。

人間の行動まで変化させてしまうのは、トキソプラズマが恐怖感や不安感を鈍らせる神経伝達物質をつくるから。寄生虫にそのような高度な(?)能力があるとは驚きですが、もしかしたら、心配性の飼い主は、潜在意識の指令により自らトキソプラズマを呼び込んで、不安感を和らげようとしているのかも・・・。

 

寄生虫といえば、sience daily の記事”In parasitic worm infection both the host and the worm produce cannabis-like molecules"(寄生虫に感染すると、寄生虫と宿主の両方がカンナビノイド様分子を生産する)ということが、カリフォルニア大学の研究により明らかになりました。

dahttps://www.sciencedaily.com/releases/2018/08/180822164157.htmily 

宿主の痛みを緩和し、炎症を抑えることで、両者が生き延びる確率を高めるためだと考えられています。

 

■「私」って何?

 

腸内フローラという言葉が認知され、発酵食品がブームになるなど、腸内細菌と健康の関係が注目されていますよね。今回ご紹介した例は、単に身体の健康を越えた大きな役割を、ヒトマイクロバイオームは担ってくれているのではないかと考えるきっかけになるのでは、それによって自分自身について再検討するきっかけになればよいなあと思っています。

ふだん漠然と「私」だと思っている私に、微生物や寄生虫までも含まれるとしたら、どこからどこまでが私なのでしょう。「私という存在は、ここからここまで」と境界線を引くことはできるのでしょうか。

これまで、人体は合成できないと考えられてきた栄養素を、知らず知らずのうちに微生物群が補ってくれているとしたら、彼らも「私」という生命の一部だと考えざるを得ません。人間のDNAが変化するまでには、何百年も、時には何万年も必要ですが、構造が異なる微生物群のDNAは、数年、数か月、数日という単位で変化します。

現代のように、これまでにないスピードで環境が変化していく時代、もし微生物が一緒にいてくれなかったら、変化に対応するスピード感を持たない人間の身体は、環境に適応することができなくなってしまうかもしれません。微生物群は、そんな私たちの足りない部分を補ってくれているのでは・・・。

いえ、「補ってくれる」というのがすでに、人間の側から見た一方的な視点ですよね。本当は人間が主で微生物が従という関係ですらなく、微生物には微生物なりの意図や意志があるのかもしれませんし、微生物と人間の細胞が相談の上、意図的に目的を持って細菌に感染したり、免疫を働かせたりしているのかもしれません。

だとするとやはり、人間は「私」という存在に関する認識を、これまでよりずーーーっと広く取った上で、健康や生命について考える必要があるのではないでしょうか。

 

■菌と仲良く

 

キッチン用品や掃除用品には「殺菌」「除菌」「滅菌」を謳う商品がたくさんありますが、菌がいなくなるのがよいことなのか、もう一度考えてみるべきではないかと思います。

子供たちにアレルギーが多いのは、極端なきれい好きの傾向によって雑菌に対する免疫が育っていないことが原因だとも言われますし、抗生物質の乱用による耐性菌も問題になっています。病院に行くと「とりあえず抗生物質」と、関係のない症状にまで抗生物質が処方されると聞きますし、肉を食べる時必ず抗生物質を食べています。

抗生物質が大好きな私たちの姿勢は、逆に抗生物質が効きにくい「耐性菌」を生み、本当に抗生物質を必要としている人が困る結果になっています。現在の状況が続くと、抗生物質が効かなくなる時がいずれ来ることは確実視されています。考えてみれば耐性菌が生まれるのも、そもそも細菌は人間にとって必要な、なくてはならない存在だからだと思うのですが・・・。

さらに、排泄物を介して抗生物質は自然界に拡散しています。これが今後どのような結果となって現れるのかわかりませんが、自然界では「オス」が減る傾向にあることと、もしかしたら関係があるのかもしれません。

 

★画像は https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201611/2.html さまよりお借りしました★

 

■不必要なものはない

 

病原菌とされる菌に感染しても、発症する人としない人がいます。発症した人の中にも、症状が重い人と軽い人がいます。この差はその人の抵抗力、免疫力によって生まれます。

 

とはいえ、「いい加減な食生活や生活習慣によって免疫力が落ちているのだから、病気になっても仕方ない」というのではありません。もしインフルエンザにかかったのなら、その人の身体にとってはそれが必要だったのです。インフルエンザにかかると高熱が出て汗をかくなどのデトックス効果がありますよね。そうすることで、もっと大きな病気へと発展してしまうことを予防しているのではないでしょうか。

また、インフルエンザの菌という、これまで身体に存在しなかった菌に感染することで、体内の細胞が微妙な影響を受け、マイナーアップデートする(環境に適応する)というようなこともあるのかもしれません。

もしそうなら、「病原菌」と呼んで、罹患しないよう対策を取るべきでしょうか。もちろん、わたしたちのエゴは「仕事は休めないし、やらなければならないことはたくさんあるし、寝込んでいる時間などない。だから、インフルエンザになんてかからない方がいい」と思うでしょう。でも、エゴは単なるエゴであって、本当の自分ではありません。ガンなどのもっと重篤な病気にかかった人でさえ、そのことを有り難いと、感謝する人がたくさんいる、ターミナルケアに関わっていらっしゃる医師から、そんなお話しを伺ってきたばかりなので、よけいにそう思うのかもしれませんが・・。

 

「自分」って何でしょう?次回は、哲学的ともいえるそんなお話しをしていきたいと思います!

 

★画像は  https://o2o.moneykit.net/TDGate/onetime?No=13&UrlName=3054831310 さまよりお借りしました★